ペタビットマーケティング執行役員の鬼頭です。
最近、Claudeを使いすぎて自分の頭が鈍ってきている気がしています。
正論を言えば、時短で浮いた時間を生産的なことに使えばいい。ただ、そんな意志の強さは自分にはありません。空いた時間はTikTokをダラダラ見るだけです。
そんな自分が「浮いた時間の再投資先」はここだ!と思ったツールがあります。MiroFishです。
百聞は一見に如かずです。先にデモサイトを提示します。
https://666ghj.github.io/mirofish-demo/
MiroFish – 20歳・10日・6.9億円
MiroFishは中国の大学4年生、BaiFu氏がわずか10日間のVibe Codingで作り上げたOSSです。GitHubトレンドで3日連続1位を記録し、Star数は1万を超えました。盛大グループ創業者の陳天橋がデモを見て24時間以内に3000万元(約6.9億円)を即決投資したと報じられています。
開発ワークフローも興味深いです。Figmaで設計図を描き、Google AI StudioでフロントデモをFigmaから複製し、それをプロジェクトドキュメントに組み込んで、タスクをモジュールに分解してAI IDEでバッチに分けて開発させる。要は全部1人でやっています。
技術スタックはZep Cloud、OASIS、CAMEL-AI、LLM API。既存のものを組み合わせただけとも言えますし、それを10日で動くものにしたとも言えます。
何をするツールか
仕組みはシンプルです。ニュース・政策文書・金融データなどのテキストを投げ込むと、AIが数千の独立したペルソナを持つエージェントを生成します。そのエージェント同士が模擬SNS空間の中で投稿・リプライ・いいねをし合い、世論の動態をシミュレートします。最後にAIが結果を分析してレポートを出します。
マーケターとして最初に思ったのは「仮想空間でテストマーケを自動化できる」という可能性です。PRの文章を出す前にここで回してみる、キャンペーンのメッセージを複数パターン試す、新商品の反応を事前にシミュレートする。そういう使い方が頭に浮かびました。
懐疑派の指摘は正しい。それでも。
冷静な目で見た分析も出回っています。要約するとこうです。
「全エージェントが同じLLMの出力。集合知ではなく1つの知能の多重人格。創発も非合理性もバイラルも再現不可能。実SNSへの接続はゼロ。結局これは高コストな構造化ブレストツールであって、同等の出力は1プロンプトで得られる可能性が高い」
MiroFishというOSSを読み解いたら「AIが自分と会話して自分で分析する装置」だった件…
— ヒロ (HIRO) @ AIプロダクト開発 (@ni4day) March 10, 2026
この指摘は技術的には正しく。Claude(投資家役)→Claude(アナリスト役)→Claude(分析者役)のリレーに過ぎない、という見方も合っているのだと思います。
同じことは日本のサカナAIにも一時期言われていました。「既存モデルをマージしているだけ」と。
技術としてはそうなのですが、ビジネスの話で考えるとしばしばツッコミどころ満載のシステムでも、熱狂と資金を得て本物になっていく様子を見ることはありました。
サカナAIは今となっては企業価値4000億円でGoogleからも出資を受けています。
技術の正確さと、金と熱狂が動くかどうかは、別の話です。
2026年に「占い」で6.9億円が動いた意味
中国語のXにこんな投稿がありました。
2026了没想到有人还能用算命的项目融资3000万 https://t.co/0U3VXhJ3RA
— 变态黄连飘飘 (@shadowglenelf) March 9, 2026
(2026年にもなって、占いみたいなプロジェクトで3000万調達するとは思わなかった)
これが全部を言い表している気がします。
僕はAIを強烈に推進している派なのですが、最近こう言った声をよく聞く気がします。
ハルシネーションがあるから実務に耐えない、AIが書いたコードはセキュリティリスクがあるという声など。
ただそれは「使わない理由」にはなりません。これは運用方法の問題であり、AIに全てを丸投げしようとする発想から来ている批判がほとんどです。人間がプロセスの間に入ること、それが前提の話だと思っています。
1980年台生まれの僕はターミネーター2を見て恐怖する少年でした。エヴァンゲリオンのMAGIシステムやマイノリティリポートを見て、比較的最近ではアニメPSYCHO-PASSにおけるシビュラシステムなどのオチを見てに育った世代として、AIを全権委任する気にはなれません。
MiroFishはまだデモです。エンタープライズ版でも何でもありません。「予測エンジン」という看板が正確かどうかも怪しい。
それでも、金と熱狂が動いています。その事実は軽く見るべきではありません。熱狂はカロリーです。今ここにあるモメンタムを、世界を変えうるプロダクトに変換する回路が整えば、「占い」は本物になります。
高度に発達した「占い」は予知と見分けがつかないと言ってもいいかもしれません。
BaiFu氏がVibe Codingでやったことは、技術の正確さよりも先に「世界がどう反応するか」を見せました。それはマーケターとして、むしろ学ぶべき順番の話かもしれません。