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2026年の流行語”ワークスロップ”と生成AI活用のボトルネックとは?

生成AIの活用が当たり前になりつつある2026年。しかし「使えばいい」という段階はすでに終わり、いかに正しく使うかが問われる時代へと突入しています。そんな中、新たなキーワードとして注目されているのが「ワークスロップ(Work Slop)」。

今回も、社内外を問わず生成AIの実践的な活用を牽引する弊社執行役員・鬼頭健に、ワークスロップの実態と企業が今取り組むべき課題について話を聞きました。


ワークスロップとは何か

「AI Slop」の仕事版——2026年、最大の落とし穴

——最近「ワークスロップ」という言葉を耳にします。そもそもどういう意味でしょうか?

「AI Slop」という言葉はご存じでしょうか。生成AIが量産する、見た目はそれらしいが中身のない低品質なコンテンツのことで、2025年の「Word of the Year(今年の言葉)」としてメリアム・ウェブスターやオーストラリアの辞書サービスに選ばれるほど社会的に認知されました。

その「Slop」の仕事版が「ワークスロップ(Work Slop)」です。スタンフォード大学ソーシャルメディア研究所とBetterUp研究所が2025年9月に発表した論文で提唱されたもので、「一見まともに見えるが実際には役に立たない、AIで作られた仕事のアウトプット」を指します。

——具体的にどんな問題が起きているのでしょうか?

論文ではアメリカで1,150名にアンケートを実施した結果、約40%の従業員が過去1ヶ月以内にワークスロップを受け取った経験があると回答しています。受け取った側はその処理に平均約2時間を費やしており、月換算では約3万円の損失、1万人規模の企業では年間13億円規模の時間的ダメージになるという試算も出ています。

さらに怖いのは、数字より人間関係への影響です。受け取った側の53%がイライラし、38%が混乱し、22%が不快に感じると報告されています。信頼を積み上げるのに時間がかかる一方で、崩れるのは一瞬ですから。


マーケティング現場での実態

「AIで作りました」が通じない時代が来ている

——マーケティングの現場でも同じことが起きているのでしょうか?

むしろマーケティングこそ最も影響が大きい領域だと思っています。広告文、メール、SNS投稿、提案書——生成AIで作れるものが多い分、チェックなしでそのまま使ってしまうリスクも高い。

実際に問題になるパターンを挙げると、AIが出力した内容をそのまま使う、引用URLを確認せずに使う、AI要約しか読まずに元資料を確認しない、といったことが典型例です。特に知らない領域を丸投げするのは非常に危険で、自分で判断できないので間違いにも気づけない。AIはあくまでツールで、使う人間の理解力が品質の上限を決めます。

——「AIが言ったから」という言い訳は通じないということでしょうか?

そうです。エアカナダの訴訟事例が有名ですが、AIチャットボットが誤った案内をしたとき、企業側が「AIが間違えた」と主張したにもかかわらず、裁判所は企業の責任を認めました。個人レベルでも同じで、AIを使って誰かに何かを伝えた瞬間、それは自分の発信として責任が生じます。ハンマーで何かを壊しても「ハンマーのせい」にはならないのと同じですね。


2026年、組織が直面するボトルネック

個人の問題ではなく、組織の構造問題として捉える

——2026年は特にこの問題が深刻化すると見ているとのことですが、その背景は?

日本のAI導入率は2025年末時点でまだ日常的利用者が約20%程度と言われています。つまりこれから本格的に使い始める層が大多数を占める。問題は、自発的に学んで使い始めた人たちと違い、これからの層は「上から言われたから使う」という動機で入ってくることが多い点です。

2026年1月に発表されたワークスロップの続編論文では、この問題を個人の責任だけでなく組織の構造的な問題として捉えるべきだと指摘しています。忙しすぎて余裕がない、エンゲージメントが下がっている、心理的安全性が低いといった組織の状態が、ワークスロップを生む土壌になっているというわけです。

——企業としてどう対策を打てばいいのでしょうか?

3つのアプローチが重要だと考えています。まずAIリテラシ教育への投資。「使え」と言うだけでなく、何がNGなのかを組織全体に伝えることが先決です。AIを正しく使っている人ほどワークスロップ率が半減するという調査結果もあります。

次に心理的安全性の確保です。「これって合ってますか?」「このAIの回答、怪しくないですか?」と相談できる雰囲気がなければ、疑問を持っていても確認せずにそのまま出してしまう。AIを正しく使うために、実は人間関係の質が最も重要なんです。

最後に明確なルール作り。「最後は必ず人がチェックする」という運用を明文化するだけで、多くのリスクを防ぐことができます。


ペタビットとしての取り組み

生成AI活用の「次の段階」へ

——ペタビットマーケティングとして、この問題にどう向き合っていますか?

弊社では以前よりデータドリブンなマーケティングと生成AIの組み合わせを推進してきましたが、今後はAIリテラシの底上げと実践的な活用ルールの整備を、クライアントへの支援メニューとしても強化していく方針です。

ツールを導入するだけでは何も解決しません。チームとして正しく使える状態を作ることが、2026年以降のデジタルマーケティングにおける本当の競争力になると考えています。生成AIの活用に関心がある企業様は、ぜひ一度ご相談ください。


取材・文:ペタビットマーケティング編集部