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「toA」という新しいビジネスの地殻変動 – AIエージェントを「使う側」から「使われる側」へ

執行役員の鬼頭です。

「AIで業務効率化」という話は2024年頃からずっと聞きますが、2026年に入って少し次元が変わってきたと感じています。AIが業務を「手伝う」段階から、AIが自律的に「動く」段階に移行しつつある。その変化を象徴するキーワードが「toA」です。

補足:「BtoA」は従来、企業が行政機関に向けてサービスを提供するビジネスモデル(Business to Administration)を指す既存用語です。本記事では混同を避けるため、AIエージェント向けを指す新概念として「toA」と表記します。


「toA」とは何か——AIがお客さんになる時代

toB(法人向け)、toC(消費者向け)という分類はおなじみですが、今年に入って第三の軸が生まれています。toA——AIエージェントそのものを「使い手」として設計されたサービス・インフラのことです。

これまでのデジタルサービスはすべて「人間が操作する」ことを前提に設計されていました。ところがAIエージェントが実務に入り込むと、その前提が崩れます。人間向けに最適化されたサービスは、エージェントにとって使いにくかったり、そもそも対応していなかったりする。その「空白」を埋めるために、新しいカテゴリのサービスが一気に生まれ始めました。そもそもtoAという言葉を私が初めて目にした以下のX記事の調査では200件以上のtoAサービスが確認されています。

一言で言えば、「人間向けには解決済みだった問題が、AIエージェントという新しい利用者の登場によって再出現している」状況です。


AIエージェントが自律的に動くために必要な5つの条件

200件超のtoAサービスを分類していくと、ひとつの構造が見えてきます。エージェントが自律的に仕事をするには、結局のところ5つの条件が揃う必要があるということです。

条件 人間で言うと 代表サービス例
存在証明(私は誰か) 名刺・社員証・メールアドレス AgentMail(YC出身、約9億円調達)
実行環境(どこで動くか) オフィス・作業スペース 各種サンドボックスサービス
外部接続(どうつながるか) 電話・外回り・社外との連絡手段 Composio(500以上のアプリ連携)
記憶(何を覚えているか) 手帳・ノート・経験の蓄積 Mem0(会話から自動でファクトを保存)
経済活動(どう収益化するか) 給与・請求書・入金確認 HYRVE AI(エージェントが仕事を受注・稼ぐ)
参照:https://x.com/paji_a/status/2036398711006437524

5つのうちどれが欠けても、エージェントは止まります。監視・セキュリティ・音声・通信といった残りのカテゴリは、この5つの土台の上に乗る拡張機能として位置づけられます。


「成熟した市場」に新しい穴が開いている

toA市場の面白さは、まったく新しい技術が必要というわけではなく、既存の成熟した領域に「エージェント向けの穴」が開いているという点です。

メールを例に取ります。メールサービス自体はとっくに成熟していますが、AIエージェントが使おうとすると途端に問題が出ます。プログラムからメールボックスを即座に作れて、受信内容を自動で読み取れて、ワンタイムパスワードも取得できる——そういう設計のものが存在しなかった。AgentMailはその穴を埋めるために生まれたサービスで、Y Combinatorの支援を受け約9億円を調達しています(その他の事例や詳しくは先ほど引用しているX記事をご覧ください)。


広告運用の現場から——toAはマーケティングに何をもたらすか

デジタルマーケティングを10年以上やってきて痛感するのは、「波が来る前に理解しておいた会社と、来てから慌てて追いかける会社では、積み上げの量が全然違う」ということです。

toAの話は、今すぐ何か投資しなければならないという話ではありません。ただ、広告運用に携わる立場として一点だけ強調しておきたいことがあります。

弊社のビジネスに即して考えると、数年後——いや数ヶ月後かもしれません。toA向けの広告が誕生しても、まったく不思議ではありません。

これまでの広告はすべて「人間に見てもらう」ことが前提でした。検索結果に表示する、SNSのフィードに出す、どれも人間の目と判断が起点です。toAインフラが整うと、AIエージェントが自律的にサービスを探し、比較し、発注するという流れが生まれます。そのとき、「エージェントに見つけてもらうための広告」が必要になります。

AIエージェントに見つけてもらうために広告を打つ時代は、すぐそこに来ています。

その形がどうなるかはまだ見えていません。ただ「人間が検索する」「人間がクリックする」という前提が変わるとき、広告の設計思想ごと変える必要が出てきます。今から「エージェントがどう情報を取得し、どう意思決定するか」を理解しておくことが、次の時代の戦略の土台になると考えています。


今すぐ動く必要はあるか

toA対応の技術投資を今すぐ急ぐ必要は、大半の中小企業にはありません。ただ以下の3点は、今から積み上げておく価値があります。

  • 社内でAIを試す文化を育てる——インフラが整ったとき、使いこなせる土台があるかどうかが差になります。
  • AIの出力に責任を持つ人を決めておく——ツールが進化しても、最終判断は人間です。誰がチェックして承認するかを先に決めておく。
  • 情報のアンテナを立て続ける——この領域は半年で景色が変わります。月1回でも動向を確認する習慣が、大きな変化への準備になります。

まとめ

toAはまだ多くの方にとって遠い話に見えると思います。ただ、AIエージェントが実務に入り込む速度は明らかに上がっています。焦って乗り遅れないようにするより、方向性を誤らないように理解しておくことの方が重要です。

「自社ではどう考えればいいか」という具体的な相談があれば、いつでもご連絡ください。

参考:@paji_a「Claudeが加速させる『toA』という新潮流」(X、2026年)

     

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この記事のライター

鬼頭 健

執行役員 / マーケター 鬼頭 健

1982年生まれ、神戸生まれ、神戸育ち。1児の父。
2016年ペタビットマーケティング立ち上げ。その前は広告運用←CRM←自動車業界の会社で勤めていました。担当領域はデジタルマーケティング全般ですが、特にインハウス広告運用の支援とAIを使ったデータマーケティングやそのAI基盤構築。LookerStudioによるダッシュボード構築も得意です。BtoBマーケティングのお仕事を多く担当させていただいています。