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SynterとClaude Adsそして日本のShirofune – 広告運用AIエージェントの現在地

執行役員の鬼頭です。広告運用のAI自動化ツールについて書きます。

海外のマーケ系メディアを追っていると、2026年3月に気になるニュースが流れてきました。AIエージェントが自然言語で複数の広告プラットフォームを横断操作する——そういうツールが本格的に登場し始めています。


Synterという「広告運用のCursor」が登場した

米国スタートアップのSynterが2026年3月9日にステルスから姿を現しました。B2Bマーケティング界隈では権威のあるDemand Gen Reportも取り上げています。(出典:Demand Gen Report、2026年3月27日

創業者のJoel Horwitzが使ったキャッチコピーが「Cursor for Ads」です。コーディングツールのCursorが自然言語でコードを書くように、広告運用を自然言語で操作する。発想としてはわかりやすい。

具体的にどう動くかというと、「CPAが$150を超えているキャンペーンを一時停止して」「先週7日間の全媒体のパフォーマンスを出して」と入力すると、AIが各媒体の公式APIを叩いて実行します。スクリーンスクレイピングではなく正規のAPI連携で、承認フロー付きです。

対応媒体はGoogle広告・Meta・LinkedIn・Microsoft Advertising・Reddit・The Trade Desk・StackAdaptの7媒体。広告の生成(バナー・動画・LP)やコンバージョントラッキングの設定まで含まれています。

パイロット段階で報告されている数値はこうです。

指標 数値
パイプライン創出 200万ドル超(うちエンタープライズ100万ドル超)
ROAS 11倍超
プラットフォーム管理工数 約60%→20%以下に削減
キャンペーン改善速度 3倍向上
週間節約時間 10時間超

ただ、これはパイロット段階の自社発表データです。ステルスから出てきたばかりのスタートアップの数値をそのまま信じるのは早い。「こういう方向のツールが本格的に登場した」という事実として受け取るのが適切だと思っています。


実は私僕もClaude Adsという広告運用エージェントを使っている——正直な感想

Synterのような「AIエージェントが広告を操作する」という流れ、私自身もすでに実験しています。Claude Adsというツールです。

ただし使い方はSynterとは少し違っていて。Claude AdsはMCP経由で直接操作もできるらしいですが、公式のskillsではないので広告アカウントのデータをCSVでエクスポートしてClaudeに渡す形で使っています。アカウントのパフォーマンスデータを食わせて、改善仮説を出させる、という使い方です。

使ってみての正直な感想は「分析の補助としては十分便利、でも実行は自分でやる」です。どのキャンペーンに問題があるか、どこに予算を寄せるべきかの仮説出しは速い。ただ実際に管理画面を操作するところは、まだ自分の目で確認してから動かしています。Synterのように「自然言語で実行まで」という段階には、個人的にはまだ任せきれていません。

claude-seoも今度使ってみようと思う


日本にはShirofuneがある——という話

ここで正直に書いておきます。「複数媒体を横断して自動最適化する」という機能は、日本にすでに優れたツールがあります。Shirofune(シロフネ)です。

Shirofuneは国内広告運用自動化ツールの市場シェア9割超を持つサービスで、Google・Yahoo!・Meta・LINE・TikTok・Amazon広告など10媒体以上に対応しています。「1日10分でプロ品質の広告運用」を謳い、月間作業時間を最大92%削減しつつCV数を改善した実績もある。13,000アカウント以上が利用しており、大手広告代理店でも基幹システムとして採用されています。(出典:Shirofune公式サイト

Synterとの違いを整理するとこうなります。

Synter Shirofune
操作方法 自然言語で指示 アルゴリズムが自動実行
対応媒体(日本) Yahoo!広告・LINE広告は非対応 Yahoo!・LINE・TikTok含む10媒体以上
日本語対応 現時点では不明 完全対応
料金 $49/月〜(無料プランあり) 広告費×5%、最低27,500円/月
現在の状態 ステルス明け・初期段階 国内シェア9割超・実績多数

Synterの無料プランは試してみたいと思っています。ただ現状の日本語対応・Yahoo!広告対応・国内媒体対応を考えると、日本の中小企業がSynterをメインの広告運用自動化ツールとして使うのは時期尚早です。広告運用のAI活用・自動化という意味では、まずShirofuneを検討する方が現実的でしょう。


何が自動化されて、何が残るのか

SynterもShirofuneも、結局のところ「定型的な操作工数」を削減するツールです。自動入札が普及したとき、多くの担当者が「あとはGoogleに任せればいい」と感じました。でも実際には、自動入札の精度を上げるためのコンバージョン設計、除外キーワードの整理、広告文の磨き込みといった人間の作業が、以前にも増して重要になりました。

AIエージェントによる広告運用自動化も、同じ構図になると見ています。

自動化される領域 人間が判断する領域
媒体間の予算配分調整 ビジネス目標の設定・KPI設計
入札価格の最適化 クリエイティブ戦略・メッセージ設計
レポート生成 数値異常の原因判断
定型A/Bテストの実施 顧客の現場から得た洞察の反映

「広告運用AIツールが出たから担当者は不要になる」という話ではありません。定型作業の工数が減った分、担当者は戦略を考える時間を確保できます。その時間を使えるかどうかが、これからの差になります。

今すぐできることとして、自分の広告運用業務の中で「毎週繰り返している定型作業」と「判断が必要な作業」を書き出してみてください。前者がAIに移管される候補で、後者があなたが磨き続けるべき領域です。


少し辛口に言うと

「AIで担当者は不要になる」とイコールではありません。ただ正直に言います。

定例会で数値を読み上げるだけで終わっている、あるいは定例会すらない。検索クエリへの言及がない。媒体アロケーションに対する深い洞察がない。そういう運用者は、AIに取って代わられるかもしれません。それは脅しではなく、現実として向き合うべきことだと思っています。

学生のころ読んでいた攻殻機動隊に、「私の中のghostがささやく」という言葉があります。

攻殻機動隊の世界では、ロボティクスが高度に発展し、機械と人間の境界が曖昧になっています。それでも人間を人間たらしめるのは、不確定さだと思っています。AIは過去のデータから最適解を導きます。でも「この数字の裏に何があるか」「クライアントが本当に解きたい問いは何か」を問い続けられるのは、自分のghostを持つ人間だけです。

未来は不確定だからこそ、自らのghostに問うことができる広告運用者が、人間の価値を発揮できます。定型作業はAIに渡して、その分だけ深く考える。それが今の時代の広告担当者に求められていることだと思っています。


広告運用のインハウス化・AI活用について具体的に相談したい方はお問い合わせからご連絡ください。

参考:Demand Gen Report「Synter Emerges from Stealth With AI Agent to Execute Paid Media Campaigns」(2026年3月27日)Shirofune公式サイト

     

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この記事のライター

鬼頭 健

執行役員 / マーケター 鬼頭 健

1982年生まれ、神戸生まれ、神戸育ち。1児の父。
2016年ペタビットマーケティング立ち上げ。その前は広告運用←CRM←自動車業界の会社で勤めていました。担当領域はデジタルマーケティング全般ですが、特にインハウス広告運用の支援とAIを使ったデータマーケティングやそのAI基盤構築。LookerStudioによるダッシュボード構築も得意です。BtoBマーケティングのお仕事を多く担当させていただいています。